Shiryu presents
|
HOT!タール通信 Ancient future vol.5 【空耳か? 実音か?】 Written by Shiryu 音を聞くのは耳で行われると思われがちですが、耳はまだほんの入り口に過ぎず、 最終的に脳で認識するという話を前回しました。蝸牛の有毛細胞から出た聴神経は脳 幹に入り、そこで何段階も中継されて、大脳皮質に至ります、と。 この経路は非常に複雑ですが、大まかに言って四つの特徴があります。 第一に、聴神経は基底膜上のどの位置の有毛細胞につながっているかによって、周 波数の受け持ちが違います。このような周波数の分担は、大脳皮質に至るまでほぼ変 わりません。つまり脳幹での処理は主に周波数ごとに行われます。 第二に、聴覚系の経路は脳幹に入るといくつかに分岐します。分岐したそれぞれの 経路は、種類の異なった音響的特徴の分析に関与していると考えられています。大ま かに言って、音源の識別に関わる特徴を処理する経路と、音源の位置に関わる特徴を 処理する経路とに分けられます。前者で処理される特徴には、音の始まり、終わり、 音の強さの変化、周波数の変化、周期性などが含まれます。後者の経路では、左右の 耳からの神経経路が合流することによって、両耳に音が届く時間の差や強さの差が検 出されます。耳に入ってきた音は、このように一旦バラバラにされ、並行して処理さ れるのです。 第三に、神経信号が聴覚系の経路を上行するにしたがって、段階的に処理が進んで いきます。処理が進むにつれて、もともと音に含まれていた無駄が省かれ、音源を識 別したり位置を判断したりする上で本質的な特徴だけが抽出・強調されていきます。 ハンドドラム(TAR)を叩く際に聞こえてくる歌や音楽には聞こえてくる方向があり ます、ということはこの第二の特徴が関係しているのだろうか? 脳がそう認識して いるということは、実際に鳴っている音(歌、音楽)なのだろうか? こうして効率よく処理ができるのですが、同時に「空耳」が生じるもとにもなりま す(むむむ! やっぱり空耳なのか?)。また処理が進むにつれて、最初はバラバラ に処理されていた特徴が次第にまとめられていき、より大局的で複雑な特徴が抽出さ れるようになります。 第四に、聴覚系には耳から大脳皮質へ向かう経路の他に、大脳皮質から耳へ向かう 経路も存在します。このような経路の役割が最近注目され、盛んに研究されていま す。これらの経路は音の続きを予測したり、やかましい環境で何か特定の音を聞き取 ろうとしたりするときに、基底膜や脳幹での処理のしかたを変える働きがあるのでは ないかと考えられています。 こうして脳幹で処理された音の情報は、大脳皮質の聴覚野と呼ばれる領域に送られ ます。これは右半球と左半球とに一つずつあります。聴覚野では、音響的特徴の処理 がほぼ完成すると考えられます。 ここまでは周波数ごと、特徴ごとにバラバラに処理されてきたわけですが、音の性 質を判断したり音源を識別したりするためには、これらをまとめなければなりませ ん。しかしこれは大変難しい問題です。というのは、耳に入ってくる音は一つの音源 から発生されたとは限らず、複数の音源が存在していることが多いからです。 ハンドドラム(TAR)セッションの時、複数の人が輪になって、同時に音を出しま す。どの特徴がどの音源のものなのか、どうやって決めるのでしょうか。これは各周 波数成分の周波数の関係とか、強さの変化のしかたの共通性とかに基づいて行われる という心理学的な証拠があります。しかし神経でそれがどのように実現されているか については、未解決の重要問題となっています(おーっと、結局今分かってない事も あるってことだな)。ちなみに、このような特徴の統合がいつもうまくいくとは限り ません(!)。また物理的には存在していない情報を創り出すこともあります(おっ と、空耳説優位か?)。このようなプロセスは、音の素材(特徴)を集めて編集・解 釈する作業と見ることができます(もし、これにあたるなら、あの妙なる調べは脳の 解釈した音ということになるが、果たして・・・)。 さて大脳皮質では、音源が何であるかという情報は側頭葉から前頭葉へ、音源がど こにあるかという情報は頭頂葉から前頭葉へと送られ、視覚や体性感覚などによる情 報とも合流します。そして例えば車を避けるというような、行動の制御に用いられま す。 また話し言葉の理解には、言語野と呼ばれる部位が重要な役割を果たします。右利 きの人の99%、左利きの人の約2/3では、左の側頭葉に言語野があります。ただし言 語野だけで言葉の理解がすべて行われるわけではなく、脳内の広範な活動が不可欠で す。言葉の抑揚とか音楽の処理は、主に右半球で行われると考えられています。 このように大脳皮質では、音の種類によって、また処理の種類によって、異なった 部位が働きます。音を聞くということは、こうしたさまざまな部分の総合的な働きに よるのです。 さて、セッション時に聞こえてくる音(歌、音楽)の正体は結局??? 続きは次回。 【タール通信AncientFuture INDEX】(8/30/2004)
[ NEXT / BACK / HOME ] ゆきさんのタール通信