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HOT!タール通信 Ancient future vol.6 【あん】 Written by Shiryu あん、といってもシュメールの天神アンの話でも、「あん」が「あうん」に変わっ たとかって話ではありません(笑)。 「いあい」と言うのと「うあう」というのでは「あ」の音が違うんです。いきなり こんな話をしだすと、なんのこっちゃと思うかもしれませんね(笑)。 声に出して「新宿」と言ってみてください。続いて「新橋」といってみてくださ い。 気づきましたでしょうか? 「しんじゅく」と言ったときと「しんばし」と言った ときの「ん」の音は実は違うってことに。「しんばし」だったら「n」じゃなくて 「m」的になっています。調音位置も違う。「しん」と唇が閉じているわけです。 「しんじゅく」だったら唇は閉じていませんから全然違う音なんです。 違う作り出し方をしているし、違う音響信号であるにもかかわらず、私たちの頭の 中では両方「ん」なわけじです。 そういうことを考えていると、ハンドドラム(TAR)の例えばMASMUDIというリズ ムの 12345678 D_D___T_D___T_E_ の「D」も音がそれぞれ違うんだよなぁ、私たちの頭の中では両方「D」なんだけど、 などと考える。 このような現象についてまだ完全な解決は見てないというが(またかい(笑))、 動き、連続的な変化、私たちが知覚のときにとらえている音素の情報というのは、 いったい正体は何なんだろう? ここで、前回少しだけ触れた「聴覚の補完現象」に関してもう少し検討してみたい と思います。 音は音響信号として認識されますが、音響信号を取り除くというのは、ある波形の 一部分を切り取ってしまうことです。そうすると、もうそこは聞こえなくなってし まって極めて変なことになります(あたりまえと言えばあたりまえですが(笑))。 ところが、そこに雑音を入れてやると、そこにはもともとの音声に関する情報はな いにもかかわらずうまく補完されて聞こえることがあるといいます(!)。 ある音を 部分的に消してしまうんですけど、単に削除して無音だと単なるブツブツ音ですが、 雑音をのっけるとなぜか聞けるようになるという現象です。これが聴覚の補完現象で す。 基本的には200ミリ秒ぐらいの範囲が少なくとも非常に重要で(微妙な言い回し (笑))、それぐらいの広がりを持ってお互いに隣同士もオーバーラップしながら情 報は存在しています。その中の動き、特にスペクトルを分析してみると動いていくん だそうです。つまり音が「あー」なら「あー」で一定じゃなくて、「いあい」と言え ば、スペクトルがわっと変わるわけです。この変わっていく変わりの部分というのが 非常に重要なんだそうです。変わっていく部分が聞こえていれば補完できると。実際 にやってみると、ノイズの部分でも音が聞こえるような感じがするそうです。 脳が音を作ってると考えると、その音は一体どこから持ってきて、どんなふうに 作っているんだろうというのが、実に不思議ですよね(笑)。 「音」というのは音響信号だと思うから不思議なのであって、この現象でも解釈は 二通りはあり得ます。 一つは脳内でそこの欠けている部分に相当する音が実際にどこかで作り出されてい るという立場。 もう一つはそんなもの作り出す必要はないという立場。 前者は、脳内で外界に対応するような神経活動が起きなければ知覚できないとする 考え方です。知覚するということは外界の鏡像を脳内のどこかに作り出すことだとい う観点に立てばそうなんですけど、論理的に考えてみると別に知覚するということは そういうことじゃなくてもいいことになります。 例えば、そこに「音がない」という証拠がなければ、「ある」と仮定してもいいわ けです。そこのデータは一切使えませんが、残りの部分で認識が成立するならばそれ でいいじゃないかということです。その間はあるかないか分からないという状況だっ たら、「音がない」想定というのは極めて確率的に低いだろうから、そのままつな がっていると想定するのが一番自然なのです。物事は急には変わらない、という仮定 の下に判断をするわけです。 例えば、本当は「音がない」としましょう。こことそっちにものすごくつながりの いい出来事があって、しかし本当は途中で終わっていて、その終わった瞬間に別の雑 音が偶然にも入って、その雑音が終わった瞬間に、また偶然にも極めて前と相関が高 いことが起きているという解釈もあり得るわけなんですけど(笑)、こういう可能性 というのはかなり低いと思われます。 つまり、音と音が繋がっているように思われれば、繋がってると判断します。 普通 はつながっているものが、どこか邪魔されたと思うのがより自然で世の中でありがち なことであり、統計的にもそっちの方が非常に多いわけです。なので、別に「音がな い」ところにデータが全部ないと、「音がない」ところが何であるかが分からないか といえば、そんなことは全然ないわけです。要するに、ここは切れていませんよとい うことだけで脳にとっては十分なのです。 そうだとすると、あえて脳内で欠けている 部分を作り出す必要もないし、ましてや入ってくる音としてそこに音がないのに、何 で聞こえるかという問題ではなくなってしまうのです(!)。 続きは次回。 【タール通信AncientFuture INDEX】(9/4/2004)
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