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HOT!タール通信 Ancient future vol.7 【犯人は誰だ?】 Written by Shiryu



 前回の「しんばし」の話ではありませんが、私たちが聞いているのはあくまでも音
響的パターンから何かを抽出して、それとマッチングして頭の中に入っているものと
マッチングした結果そうだと思っているだけのものです。だからその結論を導くのに
十分な証拠さえあれば、脳的には(笑)それでいいわけです。
 脳のゴールは犯人捜しであって、証拠捜しではないのです、もちろん証拠捜しでは
ないって言っても、知覚というプロセスは証拠捜しですが、最終的に知りたいのは犯
人なのです!
 で、犯人の遺留品とかというのはいっぱいあるわけです。音響信号というのは犯人
の遺留品にすぎません。
 犯人の遺留品がこうでしたと。例えばここに指紋があります、ここに犯行に使った
凶器が落ちていましたとか何とかって断片的な情報が与えられるときに、それで犯人
が特定できればそれでいいわけです。
  ところが多くの説や議論というのは、ここに指紋があったら全部の指の指紋がない
と犯人は作り上げられないとか、そんなようなことを言っているように思われます
(笑)。別にそこから犯人を作り上げなくたって、犯人が一意に特定できさえすれば
いい、脳はそういう働きをしているはずなのですが。
 こういう考え方をすると、ハンドドラム(TAR)を叩く際に聞こえてくる音(歌、
音楽)も、実際にその音がなっているかどうかは関係なく、脳がその瞬間になってい
る音としてどう解釈したか、とうのが問題で、そう解釈するに十分な証拠があれば、
全部が揃っている必要はないということになります。

 こうなってくると知覚というのはそもそも「仮説」だということになります。脳内
に蓄えられているいろいろな事前知識もあるし、それからいろいろな感覚器官から
入ってくるいろいろな情報、それは全部、状況証拠なのです。犯人に対する状況証拠
だけど、それを踏まえた上で今、犯人だと思えるやつはこれなんじゃないかという仮
説をどんどん作り出していく。ある段階で犯人を100%絞りきれなくても、かなり強
い証拠がポンと入ってきたらそれ以上聞かなくたってこれだとなるかもしれないし、
そういうプロセスをどんどんやっていると考えられます。
 だから、証拠が入ってくるのをうまく取り入れながら仮説を更新していくプロセス
が働いていれば(いきなり聞こえる人と、数回参加して聞こえる人とかの違いはこの
プロセスが働いているかどうか? プロセスができてるかどうか? という違い
か?)、絞り込みというのはどんどん、もうオンラインで変わっていっているはず
で、さっきの時点と今の時点とではまったく同じ情報が与えられてもまた振る舞いが
違ってきます。さっきの時点でこの指紋が見つかっても、それはまだ犯人を絞れない
かもしれない。今の時点でこの指紋が見つかったら、それはもうこいつしかないじゃ
ないかという話になるかもしれない。 
 だからその辺の情報が与えられてくる時間的な変化と、それを受けてこっちが変化
する、受け手側の方が変化するその両方、この相互作用を込みで考えないといけない
のかも知れない。

 上の仮説では詳細を語らずに、端折って説明してしまったが、成り立つにはある程
度の前提条件があります。
 それは、断続音の合間に雑音を入れたときに補完が成立して断続音が連続音として
聞こえるためには、断続音の周波数が雑音の周波数帯域に含まれている必要がある、
ということです。つまり、現実に連続音が存在してこれが雑音で隠された場合と同じ
状態になっているときだけに補完が行われるということです。これは、日常の聴覚に
おいて、対象とする音源からの音が実際に雑音によって隠された場合にのみ補完を行
うためであると考えられます。このような補完機能は音源解釈に頑健性を与える上で
きわめて重要であると思われます。
 考えてみれば、そりゃそうです(笑)、何でもかんでも話し声や、歌声や、音楽に
聞こえてたら、日常生活に支障がでます(爆)。
 ではそもそもこのような補完がなぜ可能なんでしょうか?
 その理由の第一は、通常の状況においては音響情報を補完できる様々な非音響的情
報が存在し、これを手がかりに使えることです。例えば言語音声の場合、音響的、調
音的、意味的、構文的、視覚的な情報を得ることが可能であり、これらを手がかりに
補完が行われていると考えられます。
 理由の第二は、そもそも音響信号が冗長であることです。このため音響信号そのも
のの中に時間的に分散した手がかりが存在していて、欠落データを周辺のデータから
予想することが可能になると考えられます。

 続きは次回。


【タール通信AncientFuture INDEX】

(9/9/2004)


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