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HOT!タール通信 Ancient future vol.11 【ボディイメージ】 Written by Shiryu



 ちょっと画面を見るのをやめて、視線を落としてみてください。
 そこにあなたの手があります。
 この文章を読むためにキーボードを叩き、マウスを操作するあなたの手が。あなた
は、今、どこからどこまでが自分の体だと感じているのでしょうか? 自分の体は自
分の体だよ、と思うでしょうか? 画面の情報を操作するためのキーボードやマウス
も体の一部だと感じているでしょうか?
 認知科学に「ボディイメージ」という言葉があります。自分の体のイメージのこと
です。
 たとえば車ですと、ぼわーんとした車よりもインターフェイスに「透明性がある」
車のほうが気持ちいい。
 「透明性がある」どういうことか?
 アクセルを踏んだら自分の後ろにある後輪が回る(ということがすぐに実感でき
る)。
 ハンドルを切ったらタイヤがこう動く(ということがすぐに実感できる)。
 そういう車ということです。
 あたかも自分の体の延長のように操作できる機械のほうが、気持ちがいいというこ
とです。つまりボディイメージに取り込みやすく、なおかつ自分自身を拡張してくれ
るような機械が、操作していて気持ちがいい機械なんだと思います(そういう意味で
はWinよりMacの方が好きなのだが(笑)。まぁ、そんな話は置いといて)。

 楽器でも同じようなところがあるといいます。インターフェイスが単純で分かりや
すい、透明性が高い楽器のほうが、楽しい楽器だという。「楽器を弾くときの楽し
さ」は、自分のボディイメージを広げられる楽しさだと。
 インターフェイスができるだけ透明で、それを弾きこなせるようになっていく。そ
の結果、ボディイメージが広がっていく。そこが楽器演奏の楽しさなのかもしれな
い、という。
 そういう意味で、ハンドドラム(TAR)は紛れもなくインターフェースは単純で分
かりやすい(笑)。丸い木枠に皮を張っただけ。長い胴や、飾りのようなものは一切
ない。透明性が高い楽器ということができるでしょう。つまり楽しい楽器だと言えま
す(しかし、奥は深いのだ)。
「楽器を手にする者は、自己とその楽器を同一視するものであり楽器は身体の延長で
あり、その人間の内部発動的衝動を音に変え、それらを開放する」と言います
(TARBOOK)。
 最近ではボディイメージ(身体像)は単なる概念ではなく、脳に実在していること
が身体座標の研究などの結果、明らかになっています。手に棒のような道具を持った
ときには、ボディイメージは棒の長さにまで伸びるという現象も、神経細胞レベルで
検証されています。
 音楽演奏しているときのボディイメージがどのような状態になっているのかについ
ては科学的に定かではありません。しかし、単純に棒を持った時とは異なります。楽
器の物理的な長さ大きさに拡大されるというものではありません(笑)。
 紫龍はこの夏、栃木県宇都宮市大谷町 「大谷資料館」でハンドドラム(TAR)を叩
いてきました。
 古代遺跡か地下神殿を思わせるような荘厳で神秘的な雰囲気を持つ巨大地下空間
は、旧帝国ホテルの建材にも使われた大谷石の産出地で、採掘場跡の一部が資料館と
して公開されています。第一層は深さ80m、野球場が一つ入ってしまう程の広さで
す。
 ここで叩くと、どうなるのでしょうか?
 残響音が8秒以上も続き、堀り抜かれた岩盤に反射しながら音は突き進み、反響音
が降り注いで来ます。この時のボディイメージは、その音が響き渡る地下空洞全体に
まで拡大されています。その空間全体含めて一つの楽器、身体の延長として感じられ
ます。
 おそらくコンサートホールで叩けば、そのホール全体が楽器となり、自分の身体の
延長となるのでしょう。
 楽器の場合、インターフェイスの試行錯誤が100年単位で行なわれていますが、
ハンドドラム(TAR)は基本的にそのシンプルなインターフェースを紀元前2500
年頃から変えていません。そこに張られる皮がファイバースキンになり、プリチュー
ンドの場合は、皮の貼り具合を調節することなく、しかも季節や天候を問わずに演奏
できるなど、インターフェースとしての改善が施されています。技術の力でこれまで
より簡単になったということができます。
 さて、そもそも楽器とはなんなのでしょうか? 
 ちょっと考えてみてください。
 ここで、楽器を人間と音楽のインターフェイスであろうと考えると、楽器を使いこ
なすこと自体は手段にしかすぎません。目的はその先にある世界を表現することであ
るはずです。音楽はそのためのコミュニケーションの手段だと思うのです。受け身で
ない。自ら積極的に関与する。情報発信しつつ、情報を受け取る。ボディイメージを
広げ、様々なものと繋がる。
 そこで重要なのは物理的な空間の広がりだけではなく、やはり倍音が果たす役割と
いうのが大きいと思うのです。

 続きは次回。


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【タール通信AncientFuture INDEX】

(10/06/2004)


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